2017年4月22日土曜日

プールのヤゴ (1) ウスバキトンボ 

プールで多く見られるヤゴです。


幼虫(写真↑)・成虫♂(写真↓)

元来は熱帯地方に生息するトンボですが、北へと集団移動(渡り)をすることで知られています。南西諸島を除く日本では4月頃から海を渡ってきた成虫が見られます。5月あたりから数が増えはじめ8月後半から10月頃がピークで、暖かい地域では11月の半ばまで見ることができます。幼虫の成長は非常に早く、一か月~一か月半程度で羽化します。なので、夏は使用となるプールでも、その前後に成長してしまうので「プールのヤゴ」に最も適合した種類のトンボといえます。但し、寒さには弱く、特に幼虫は水温が10℃以下になると生息に支障をきたすため、幼虫で冬を越すことはほとんどできません。成虫は長距離移動に適した幅広い後翅が特徴です。ヤゴはアカネ属のヤゴやシオカラトンボのヤゴより一回り大きく、どことなく熱帯産を思わせる雰囲気をもっています。

2017年4月10日月曜日

絵で見る同属種ヤゴの見分け方 2) ギンヤンマ属クロスジギンヤンマ

2) クロスジギンヤンマ終齢幼虫 背面全形図

特徴 頭部形状は複眼がギンヤンマよりもやや上下に短く、明らかに幅広く、前方部が尖らず膨らみ気味に終わる。終齢幼虫の複眼部内縁の淡色部分(高分解能域「身近なヤゴの見分け方」58㌻)はギンヤンマのような顕著な伸長は見られず、「角の取れた三角小島」状(「トンボ通信」102号・「房総の昆虫」57号109㌻)となる。頭部先端部もギンヤンマより突出は弱い。
翅胸部はギンヤンマよりも華奢。
腹部背面には2本のリング状の淡色条が通るが、5-6腹節で途切れがちとなり、7節以降は斑紋状となる。腹部第7‐9節に側棘があり、ギンヤンマのそれよりも細く先端が内側に向く。
尾端部のmale projection は細長く伸び、尾毛の1/2弱・肛上片の1/3弱。尾毛はギンヤンマのそれよりも明らかに長く、肛上片の3/2弱。

           下唇側片図

下唇側片の特徴 可動部分に連結する基部外縁はなだらか。側片の下縁は直線状、上縁は直線に近いカーブで先端に向かって次第に細まり、先端は内鉤が曖昧なまま尖って終わり、下唇中片に斜めに接する。ギンヤンマのそれと比べると全体的に扁平で、のっぺりした印象。
#クロスジギンヤンマ・ヤゴ #クロスジギンヤンマ幼虫 #ギンヤンマ属ヤゴ

絵で見る同属種のヤゴの見分け方 1) ギンヤンマ属ギンヤンマ

1) ギンヤンマ終齢幼虫   背面全形図

特徴 頭部は複眼が前後に細長く先端部は尖り気味となる。また、終齢幼虫では複眼内縁の淡色部(高分解能域-「身近なヤゴの見分け方」58ページ)が発達し、「水牛の角」状に伸長する(「トンボ通信」102号・「房総の昆虫」57号109㌻)。頭部前方は顕著に突出し、全体に三角形に近い形状となる。
翅胸部は幅広く逞しい。腹部背面に左右2本の淡色条がやや直線的に入り、8節あたりまで明瞭。腹部第7-9節に側棘がある。側棘は基部が太く、先端はやや外向きになる。
尾端部のmale projection は幅広く短く、尾毛の2/5・肛上片の1/5程度。尾毛は肛側片の1/2に達しない。

        
              下唇側片図

亜終齢~終齢幼虫下唇側片は、くびれが強く、特に前方部の可動部分の基部外縁は強く盛り上がる。側片端鉤部は下縁が直線的で上縁先端部はやや盛り上がって、幅広く終わり下向きに鉤状となって、中片にほぼ垂直に接する。

#ギンヤンマ・ヤゴ #ギンヤンマ終齢幼虫

2017年2月27日月曜日

ヤゴを育ててみよう。(1)

ヤゴを採集したら、トンボになる(これを「羽化(うか)」と言います)までそだててみましょう。

5月~6月頃に採集したトンボになる直前の幼虫「終齢幼虫(しゅうれい ようちゅう)ならば、木の枝(割りばしでも可)をさした容器にいれておけば、そのまま羽化がみられることもあります。

水槽などが理想的ですが、無い場合でも簡単に容器が作れます。

↑の写真はペットボトルで作った容器です。(撮影のため、明るい場所に出してありますが、本来はあまり日の当たらない場所にしましょう。暑さはヤゴの大敵です。水は水道水でも大丈夫の地域もありますが、塩素・等が含まれている場合もあるので、一日、汲み置きした水のほうが安全です。

~~~ ヤゴをもっと専門的に知りたい方のために ~~~

ヤゴを調べるときに、非常に参考になるおススメ本を紹介します。それがこちら「身近なヤゴの見分け方」(世界文化社)です。

横浜市とその周辺の平地の水辺に生息するトンボ幼虫72種を網羅し、その前身写真と似ている種の見分け方を写真で紹介した本です。

著者の梅田孝さんは、トンボ学会員の方です。写真担当の渡利さんから直接購入しました。ちなみに、梅田さん・渡利さん、ともに横浜生まれです。

ヤゴをメインにしたトンボ図鑑は非常に珍しく、画期的ともいえる本です。採集したヤゴの同定には非常に役に立つと思います。

また、この本の終わりの方には、このblogでも紹介したヤゴの採集の仕方と採集したヤゴの飼い方も載っています。


この本の中に、僕もこのblogで再三取り上げたギンヤンマ属2種(ギンヤンマ・クロスジギンヤンマ)とその種間雑種のスジボソギンヤンマの幼虫(終齢幼虫)の複眼部での見分け方が載っているので、少しそちらを詳しく見ていくことにしましょう。

↓ギンヤンマ属のヤゴは終齢になると複眼部の内側にトンボになったときになる複眼の一部が現れます。この部分は終齢幼虫の段階では複眼の機能を持たず「高分解能域」と呼ばれる(実は僕もその本でそういう呼び名であることを知りました)淡色部分となります。その部分の形状がギンヤンマとクロスジギンヤンマでははっきりと異なるため、同定に非常に役立つのです。

通常、ギンヤンマとクロスジギンヤンマの区別は頭の裏側に畳み込まれた「下唇部(かしんぶ)」の先端の内側の鉤状の部分「側片(そくへん)」を調べることでなされるのですが、実はそれは簡単ではなく、意外に誤同定が起きやすい部分なのです。しかも、生きたヤゴで調べようとすると、ヤゴを裏返しにしなければならず、ヤゴが嫌がって暴れたり、お尻の先の尖った尾部付属器で刺されて、痛い思いをしたりすることもあります。複眼の形状ならば、ヤゴを上から見るだけなので、とても楽ですね。

ただ、この「複眼内縁の淡色部分」は亜終齢からやっと現れはじめ、終齢ではっきりするので、それ以前のヤゴでは難しい、という「弱点」があります。でも、ご心配なく。「高分解能域」-つまり内縁の淡色部分のみならず、「複眼そのものの形状」もギンヤンマのヤゴとクロスジギンヤンマのヤゴでは、かなりはっきりした違いがあります。↓の写真を見ればすぐに分かると思います。

ギンヤンマのヤゴの複眼は前後に細長く、先の尖った形をしているのに対し、クロスジギンヤンマのヤゴの複眼はもっと斜め方向に大きく膨らんだ形をしているのが見て取れると思います。(鉛筆で書き加えた→部分)

この2種の種間雑種であるスジボソギンヤンマのヤゴはちょうど中間的な形状です。


                    

#「ギンヤンマ属2種幼虫の外部形態による同定について」 

#「ギンヤンマ属2種幼虫の複眼部形状による同定について」


↓の写真はギンヤンマ幼虫(左列)とクロスジギンヤンマ幼虫(右列)の各部分の違いを比較したものです。

                  

2017年2月23日木曜日

ヤゴをさがしてみよう(3) ヤゴのお持ち帰り方。

採集したヤゴを持ち帰るには。

容器は食品用の保存容器(小~中サイズ)など、身近に手に入るもので十分です。

ガラス瓶などの割れやすいものはなるべく避けましょう。

容器は数個用意しておきましょう。ヤゴはトンボと同じ肉食性で、自分より小さな動物は何でも食べます。また、ヤゴ種類によって(同じ種の場合でも)大小の差がある場合が普通で、大きい種(個体)と小さい種(個体)を同じ容器に入れると、共食いが起きるので、それを避けるためにも数個必要になります。

先ず、容器の底に少しだけ水を入れます。水草などが乾燥するのを防ぐため。


採集したヤゴを入れ、その上にヤゴと一緒に掬い上げた水草(水草の無い水辺の場合は底に堆積した落葉など)を入れます。

水はたっぷり入れる必要はありません。ヤゴは鰓呼吸ですが、その方法は魚とは異なり、水の中でなければ死んでしまうようなことはありません。ヤゴの体が湿っている状態であれば十分です。ヤゴを水の中に入れたまま持ち帰ると、移動の際の水の振動でヤゴが弱ってしまう場合もあって、むしろマイナスです。

個別の容器をまとめる大きなバケツなどがあれば理想的ですが、無い場合は個々の容器にフタをすることになります。その場合、フタに空気穴があるものを選びましょう。あるいは自分で穴をあけてもよいと思います。

ヤゴの採集は、家で飼育して、羽化させることが目的ですので、採集するヤゴは3頭程度(多くても5頭)が目安です。様々な種類のヤゴが採集できた場合は各1頭づつ、あとは写真撮影などもよい方法だと思います。その場合は採集した環境の写真も撮影しておくこともおすすめします。ノートに採集日時・天気・なども描き込んでおきましょう。

2017年2月18日土曜日

ヤゴをさがしてみよう (2) ヤゴ採集道具と採集の仕方。

今回は実際にヤゴを採集する場合の道具(つまり採集網ですね)とこの前に紹介した水辺での採集の仕方を紹介します。

先ず採集網ですが、


写真のような、網の先が平らになった通称「タモ網」を使います。普通の捕虫網でも使えないわけではありませんが、ヤゴを救う場合、水草や水底の堆積物をそのまま掬い上げるため、網の先にかなりの重量がかかります。先の丸い網だと、その重さに耐えきれず、曲がってしまうことがよくあるのです。

池や湿地・田んぼの畔の水路(やや広がった場所)、小川などの岸辺から網が届く範囲でヤゴ採集を行います。その辺りに繁茂している水草(または落葉など)ごと掬い上げます。落葉の場合、その下の泥も一緒に救ってしまうので、泥は網を水に入れて揺すって落としてください。網を陸地に引き揚げて、中の物を出して、探ってみてください。中でゴソゴソと動くものがあります。ヤゴかもしれません。中の水草や落葉を出した後の網も調べてみましょう。ヤゴが引っかかっていることも多いです(とくにイトトンボ類の場合)。

長靴も用意しておくと便利です。水に入らなくても採集は可能ですが、ぬかるみになっている場所も多いので、泥まみれになる事を避けるために必要になる場合もあります。

2017年2月14日火曜日

ヤゴをさがしてみよう (1) ヤゴってどんな場所にいるの?

今回から「ヤゴをさがしてみよう」シリーズの始まりです。

皆さんはトンボの幼虫は「ヤゴ」と呼ばれていることはご存知ですよね。ヤゴは池や沼・田んぼや湿地、小川などの水中に住んでいることも知っている人も多いと思います。

でも、一口に「池や沼や小川」と言っても、はっきりとはわからないでしょう?

大きい池(それこそ湖みたいな)や、小さな池(それこそ水たまりみたいな)、様々ですよね。小川にしても、ゆっくりと流れる川もあれば、流れの速い川もありますね。-実はいま挙げたすべてにヤゴは生息しているのですけどね。

でも、大きな湖の真ん中や流れの速い川の真ん中にはヤゴはほとんど住んでいません。大きな湖の真ん中には実はごく限られた種類のヤゴ(ウチワヤンマとかメガネサナエ、という湖の底の泥の中に潜っているヤゴです)がいるのですが、こんなヤゴはとても採集など出来ませんから、これらのヤゴは「例外」としましょう。


下の写真はウチワヤンマの亜終齢ヤゴです。ウチワヤンマは「ヤンマ」とついていますが実際はヤンマ科ではありません。ヤンマ科とは遠い系統で、かつヤンマ科よりも原始的な「サナエトンボ科」に属しています。平べったい体で硬そうな皮膚(外骨格)をしていて、見るからに深い水底に住んでいそうな感じでしょう? 勿論、僕が採集したものではありませんし、僕の住んでいる地域には、これが住んでいそうな大きな池や湖はありません。「かっこいいヤゴ!」と思うかもしれませんが、絶対、無理は禁物ですよ。もしも、大きな池が近くにあって、どうしても見てみたいという人は5月下旬~6月半ば頃ならば、羽化のため、岸寄りの浅い場所でも見られることがありますので、そういう時に採集が出来るかもしれません。もっと良いのは羽化殻を採集することです。




これから僕がヤゴ探しのお手伝いをしようと思っている、その「ヤゴ」は、あくまでも身近に見られる、ふつうのヤゴなので、どうかそこを是非、頭に入れておいてください。


大きな池を探すよりも、こんな感じの小さな池の方が、様々な種類のヤゴに出会える確率がずっと多いのです。これからはこういう池で普通に見られるヤゴをご紹介していきましょう。


上の写真のような、小さくて浅く、かつ水生植物の多い池で一番多く見られるのはクロスジギンヤンマのヤゴ↑です。クロギンヤゴよりもさらに数が多いのが

クロイトトンボ属(クロイトトンボ・セスジイトトンボ・ムスジイトトンボ)幼虫↑です。イトトンボ類の幼虫は沈水植物(植物体の全体が水中にあるタイプ)の中に紛れ込んで生活しています。クロスジギンヤンマ幼虫のよいエサでもあります。

規模が小さく、周囲に木に囲まれ、木陰も多く、尚且つ水生植物も豊富な池はそこに住むヤゴなどの水生昆虫の種類も多く、生態系が保たれた理想的な環境と言えます。でも、こういう理想的な環境は現在は自然状態では本当に少なくなりました。僕の住んでいる下田市(静岡県)周辺ではほとんど見ることがありません。写真の池も人工的に造成された「ビオトープ」です。

一方、「こんなところにヤゴなんているの!?」という環境でもヤゴは採集できます。↓

最初に紹介したビオトープ状の人工池とは全然違った水環境です。コンクリート製の水槽跡に雨水が溜まって、この状態になった場所です。植生など何も無く、ヤゴなんて、とても居そうにない感じがするかもしれません。

が、しかし・・・↓・・そんな場所にもちゃんといるのです。


↑ギンヤンマ(写真↑終齢幼虫・羽化直前・写真↓中齢前期)

コシアキトンボ(腰空き蜻蛉)終齢幼虫↑

シオカラトンボ、またはシオヤトンボ幼虫↑

実は・・・水底に落葉が堆積している、という状態がヤゴが生息するのによい条件だったのです。