2017年2月27日月曜日

おススメ本-「身近なヤゴの見分け方」 梅田孝(著)・渡利純也(写真) 世界文化社

ヤゴを調べるときに、非常に参考になるおススメ本を紹介します。それがこちら「身近なヤゴの見分け方」(世界文化社)です。

横浜市とその周辺の平地の水辺に生息するトンボ幼虫72種を網羅し、その前身写真と似ている種の見分け方を写真で紹介した本です。

著者の梅田孝さんは、トンボ学会員の方です。写真担当の渡利さんから直接購入しました。ちなみに、梅田さん・渡利さん、ともに横浜生まれです。

ヤゴをメインにしたトンボ図鑑は非常に珍しく、画期的ともいえる本です。採集したヤゴの同定には非常に役に立つと思います。

また、この本の終わりの方には、このblogでも紹介したヤゴの採集の仕方と採集したヤゴの飼い方も載っています。


この本の中に、僕もこのblogで再三取り上げたギンヤンマ属2種(ギンヤンマ・クロスジギンヤンマ)とその種間雑種のスジボソギンヤンマの幼虫(終齢幼虫)の複眼部での見分け方が載っているので、少しそちらを詳しく見ていくことにしましょう。

↓ギンヤンマ属のヤゴは終齢になると複眼部の内側にトンボになったときになる複眼の一部が現れます。この部分は終齢幼虫の段階では複眼の機能を持たず「高分解能域」と呼ばれる(実は僕もその本でそういう呼び名であることを知りました)淡色部分となります。その部分の形状がギンヤンマとクロスジギンヤンマでははっきりと異なるため、同定に非常に役立つのです。

通常、ギンヤンマとクロスジギンヤンマの区別は頭の裏側に畳み込まれた「下唇部(かしんぶ)」の先端の内側の鉤状の部分「側片(そくへん)」を調べることでなされるのですが、実はそれは簡単ではなく、意外に誤同定が起きやすい部分なのです。しかも、生きたヤゴで調べようとすると、ヤゴを裏返しにしなければならず、ヤゴが嫌がって暴れたり、お尻の先の尖った尾部付属器で刺されて、痛い思いをしたりすることもあります。複眼の形状ならば、ヤゴを上から見るだけなので、とても楽ですね。

ただ、この「複眼内縁の淡色部分」は亜終齢からやっと現れはじめ、終齢ではっきりするので、それ以前のヤゴでは難しい、という「弱点」があります。でも、ご心配なく。「高分解能域」-つまり内縁の淡色部分のみならず、「複眼そのものの形状」もギンヤンマのヤゴとクロスジギンヤンマのヤゴでは、かなりはっきりした違いがあります。↓の写真を見ればすぐに分かると思います。

ギンヤンマのヤゴの複眼は前後に細長く、先の尖った形をしているのに対し、クロスジギンヤンマのヤゴの複眼はもっと斜め方向に大きく膨らんだ形をしているのが見て取れると思います。(鉛筆で書き加えた→部分)

この2種の種間雑種であるスジボソギンヤンマのヤゴはちょうど中間的な形状です。


                    

#「ギンヤンマ属2種幼虫の外部形態による同定について」 

#「ギンヤンマ属2種幼虫の複眼部形状による同定について」


↓の写真はギンヤンマ幼虫(左列)とクロスジギンヤンマ幼虫(右列)の各部分の違いを比較したものです。

                  

2017年2月23日木曜日

ヤゴをさがしてみよう(3) ヤゴのお持ち帰り方。

採集したヤゴを持ち帰るには。

容器は食品用の保存容器(小~中サイズ)など、身近に手に入るもので十分です。

ガラス瓶などの割れやすいものはなるべく避けましょう。

容器は数個用意しておきましょう。ヤゴはトンボと同じ肉食性で、自分より小さな動物は何でも食べます。また、ヤゴ種類によって(同じ種の場合でも)大小の差がある場合が普通で、大きい種(個体)と小さい種(個体)を同じ容器に入れると、共食いが起きるので、それを避けるためにも数個必要になります。

先ず、容器の底に少しだけ水を入れます。水草などが乾燥するのを防ぐため。


採集したヤゴを入れ、その上にヤゴと一緒に掬い上げた水草(水草の無い水辺の場合は底に堆積した落葉など)を入れます。

水はたっぷり入れる必要はありません。ヤゴは鰓呼吸ですが、その方法は魚とは異なり、水の中でなければ死んでしまうようなことはありません。ヤゴの体が湿っている状態であれば十分です。ヤゴを水の中に入れたまま持ち帰ると、移動の際の水の振動でヤゴが弱ってしまう場合もあって、むしろマイナスです。

個別の容器をまとめる大きなバケツなどがあれば理想的ですが、無い場合は個々の容器にフタをすることになります。その場合、フタに空気穴があるものを選びましょう。あるいは自分で穴をあけてもよいと思います。

ヤゴの採集は、家で飼育して、羽化させることが目的ですので、採集するヤゴは3頭程度(多くても5頭)が目安です。様々な種類のヤゴが採集できた場合は各1頭づつ、あとは写真撮影などもよい方法だと思います。その場合は採集した環境の写真も撮影しておくこともおすすめします。ノートに採集日時・天気・なども描き込んでおきましょう。

2017年2月18日土曜日

ヤゴをさがしてみよう (2) ヤゴ採集道具と採集の仕方。

今回は実際にヤゴを採集する場合の道具(つまり採集網ですね)とこの前に紹介した水辺での採集の仕方を紹介します。

先ず採集網ですが、


写真のような、網の先が平らになった通称「タモ網」を使います。普通の捕虫網でも使えないわけではありませんが、ヤゴを救う場合、水草や水底の堆積物をそのまま掬い上げるため、網の先にかなりの重量がかかります。先の丸い網だと、その重さに耐えきれず、曲がってしまうことがよくあるのです。

池や湿地・田んぼの畔の水路(やや広がった場所)、小川などの岸辺から網が届く範囲でヤゴ採集を行います。その辺りに繁茂している水草(または落葉など)ごと掬い上げます。落葉の場合、その下の泥も一緒に救ってしまうので、泥は網を水に入れて揺すって落としてください。網を陸地に引き揚げて、中の物を出して、探ってみてください。中でゴソゴソと動くものがあります。ヤゴかもしれません。中の水草や落葉を出した後の網も調べてみましょう。ヤゴが引っかかっていることも多いです(とくにイトトンボ類の場合)。

長靴も用意しておくと便利です。水に入らなくても採集は可能ですが、ぬかるみになっている場所も多いので、泥まみれになる事を避けるために必要になる場合もあります。

2017年2月14日火曜日

ヤゴをさがしてみよう (1) ヤゴってどんな場所にいるの?

今回から「ヤゴをさがしてみよう」シリーズの始まりです。

皆さんはトンボの幼虫は「ヤゴ」と呼ばれていることはご存知ですよね。ヤゴは池や沼・田んぼや湿地、小川などの水中に住んでいることも知っている人も多いと思います。

でも、一口に「池や沼や小川」と言っても、はっきりとはわからないでしょう?

大きい池(それこそ湖みたいな)や、小さな池(それこそ水たまりみたいな)、様々ですよね。小川にしても、ゆっくりと流れる川もあれば、流れの速い川もありますね。-実はいま挙げたすべてにヤゴは生息しているのですけどね。

でも、大きな湖の真ん中や流れの速い川の真ん中にはヤゴはほとんど住んでいません。大きな湖の真ん中には実はごく限られた種類のヤゴ(ウチワヤンマとかメガネサナエ、という湖の底の泥の中に潜っているヤゴです)がいるのですが、こんなヤゴはとても採集など出来ませんから、これらのヤゴは「例外」としましょう。


下の写真はウチワヤンマの亜終齢ヤゴです。ウチワヤンマは「ヤンマ」とついていますが実際はヤンマ科ではありません。ヤンマ科とは遠い系統で、かつヤンマ科よりも原始的な「サナエトンボ科」に属しています。平べったい体で硬そうな皮膚(外骨格)をしていて、見るからに深い水底に住んでいそうな感じでしょう? 勿論、僕が採集したものではありませんし、僕の住んでいる地域には、これが住んでいそうな大きな池や湖はありません。「かっこいいヤゴ!」と思うかもしれませんが、絶対、無理は禁物ですよ。もしも、大きな池が近くにあって、どうしても見てみたいという人は5月下旬~6月半ば頃ならば、羽化のため、岸寄りの浅い場所でも見られることがありますので、そういう時に採集が出来るかもしれません。もっと良いのは羽化殻を採集することです。




これから僕がヤゴ探しのお手伝いをしようと思っている、その「ヤゴ」は、あくまでも身近に見られる、ふつうのヤゴなので、どうかそこを是非、頭に入れておいてください。


大きな池を探すよりも、こんな感じの小さな池の方が、様々な種類のヤゴに出会える確率がずっと多いのです。これからはこういう池で普通に見られるヤゴをご紹介していきましょう。


上の写真のような、小さくて浅く、かつ水生植物の多い池で一番多く見られるのはクロスジギンヤンマのヤゴ↑です。クロギンヤゴよりもさらに数が多いのが

クロイトトンボ属(クロイトトンボ・セスジイトトンボ・ムスジイトトンボ)幼虫↑です。イトトンボ類の幼虫は沈水植物(植物体の全体が水中にあるタイプ)の中に紛れ込んで生活しています。クロスジギンヤンマ幼虫のよいエサでもあります。

規模が小さく、周囲に木に囲まれ、木陰も多く、尚且つ水生植物も豊富な池はそこに住むヤゴなどの水生昆虫の種類も多く、生態系が保たれた理想的な環境と言えます。でも、こういう理想的な環境は現在は自然状態では本当に少なくなりました。僕の住んでいる下田市(静岡県)周辺ではほとんど見ることがありません。写真の池も人工的に造成された「ビオトープ」です。

一方、「こんなところにヤゴなんているの!?」という環境でもヤゴは採集できます。↓

最初に紹介したビオトープ状の人工池とは全然違った水環境です。コンクリート製の水槽跡に雨水が溜まって、この状態になった場所です。植生など何も無く、ヤゴなんて、とても居そうにない感じがするかもしれません。

が、しかし・・・↓・・そんな場所にもちゃんといるのです。


↑ギンヤンマ(写真↑終齢幼虫・羽化直前・写真↓中齢前期)

コシアキトンボ(腰空き蜻蛉)終齢幼虫↑

シオカラトンボ、またはシオヤトンボ幼虫↑

実は・・・水底に落葉が堆積している、という状態がヤゴが生息するのによい条件だったのです。

2017年2月7日火曜日

生息環境の違いによるヤゴの体色の違い - ギンヤンマとクロスジギンヤンマの場合。

ヤゴは空を飛べないので、体の色が住んでいる環境によって、かなり違います。これから紹介するギンヤンマ属2種(ギンヤンマ・クロスジギンヤンマ)のヤゴは水草に掴まって生活しているタイプのヤゴなので、周囲に水草が多い池と水草のほとんど無い池では、同じ種類とは思えないほど色が違うことも珍しくありません。



尚、文中、誤字があるので、訂正致します。

ハネビロトンボの越冬幼虫を 確認して➡確認した

4. 両種幼虫がに見られ➡両種幼虫が見られ

です。

ギンヤゴとクロギンヤゴでは褐色系・緑色系それぞれで体色にやや違いが見られることも事実です。

褐色系の場合、ギンヤゴは鮮明な茶褐色や黄褐色になる傾向が強いですが、クロギンヤゴはやや暗めで曖昧な色になることが多いです。

緑色の場合でも、ギンヤゴが明るい、やや黄緑色に近い色になるのに対し、クロギンヤゴは黄色みの少ない、濃い目の緑色の個体が多い傾向になります。

これは、ギンヤゴが周囲の開けていて、解放水面(水草などが水面や水上に出ていない水面)がある池(池の大きさには関係しません。池そのものは小さくても上記の条件を満たせばよいのです)に多く見られ、クロギンヤゴが周囲に木陰が多い小さい池・・に多くみられる、ということを反映している結果、といえます。

私の住む地域で、両種幼虫が見られる池の4つのタイプの写真を掲載したので、ヤゴの写真と照らし合わせてみてください。


2017年1月16日月曜日

新成人の皆さんへ-カエルとトンボの成人式

新成人の皆さん、昨日から「成人」と呼ばれる年齢の仲間入りになったわけですが、カエルやトンボの「成人式」って、何時だと思いますか?

分からないでしょう?・・・実は僕も分かりません。

でもせっかくだから、考えてみることにしましょう。

先ずはカエルから・・・かえるの子供はオタマジャクシ、といわれますが、オタマジャクシは人間でいうとお母さんのお腹の中にいる胎児の状態です。オギャー!と生まれたときに相当するのが、手足が出そろって尻尾が無くなって、カエルの形になった時です。

では、「成人」はいつなのでしょうか?・・・本当のことを言うと、これはとても難しい質問なのです。「20歳」を成人とするのは現在の日本の文化・法律が決めたことで、自然によって決められた生物学的特性ではないからです。-国や時代によっては全く違う場合もありますね。日本でもかつては15歳をもって「元服」として大人とされた時代もあります。

なので、「・・・の条件があれば、そのカエルは成人といえる」ではなくて、「・・・の条件が無ければ成人とは言えない」ということで考えてみることにします。その「条件」とは何か?といえば、「生殖能力(子孫を残す能力)」の有無、ということができると思います。

では、その時期はいつか?というと、カエルの種類にもよりますが、カエルの形になって~つまり人間で言えば「赤ちゃん」ですね~から短くても1年以上、ということになります。


それでは今度はトンボ(昆虫一般)です。昆虫の一生には蛹(さなぎ)になるタイプ(完全変態するタイプ)‐チョウやガ・アリやハチ、カブトムシなどの甲虫類が含まれます。と蛹にならず幼虫のまま成虫へと「羽化(うか)」するタイプ(不完全変態するタイプ)‐セミやトンボ・カマキリやキリギリス・バッタ、ゴキブリなども含まれます。と両方あります。それでも「成人」の目安は先ほどのカエルの場合と基本的には変わりません。「生殖活動が出来る時期」です。

トンボなどの昆虫の場合は羽化して2週間から3週間といったところでしょうか?カエルが「成人」するまでに1年以上かかるのと随分違いますね。       

その理由として先ず最初に挙げなければいけないのは、昆虫は卵や幼虫(または蛹)の時期が長く、成虫の時期が短い、という特徴です。どうしてか?というと、カエルは体の基本的な造りは人間と同じで、体が大きくなる以外に、形が極端に変わることはありません。人間の子供が大人になるのと同じです。昆虫は幼虫と成虫では体の形が全く違うグループが多いのです。体の大きさも幼虫の方が成虫よりも大きいものも少なくありません。

もしかしたら、昆虫の幼虫と成虫は全く違う存在なのかもしれませんね。

2016年12月14日水曜日

昆虫専門誌に掲載されました。「ギンヤンマ属2種幼虫の外部形態による同定について」小関裕兄

某地域の昆虫専門誌に掲載された、ギンヤンマ属2種(ギンヤンマ・クロスジギンヤンマ)の幼虫の外部形態による同定に関する研究発表です。