2015年8月28日金曜日

2015年8月21日金曜日

トンボ幼虫(ヤゴ)をもっと深く知りたい人のために―Anax(ギンヤンマ属)幼虫の同定に向けて 「対比表」による補足説明。

『トンボ通信 94』でギンヤンマ属2種(ギンヤンマ・クロスジギンヤンマ)幼虫の形態の違い-特に頭部の形-を中心に御紹介しましたが、今回はそれをさらに分かりやすくするために「対比表」を作成して、各特徴の違いを纏めてみました。両種幼虫の写真と比較してみましょう
ギンヤンマ終齢幼虫・頭部

クロスジギンヤンマ終齢幼虫・頭部

   




複眼内縁の淡色部分(「対比表」の図の橙色の部分)は、終齢幼虫になって顕著な違いとなります。その他の違いは比較的初期の段階から現れます。「頭部形状-とくに複眼部と頭部前方(青色で色分けされた部分)が一番、判別しやすい部分です。








                              

2015年8月18日火曜日

もっと深くトンボ幼虫(ヤゴ)のことを知りたい人のために-4 「Anax属(ギンヤンマ属)幼虫の同定に向けて―『トンボ通信94』後半

Anax属2種(ギンヤンマ・クロスジギンヤンマ)幼虫は羽化殻でも区別できます。

さらに、『トンボ通信49』では、羽化殻♂♀で見分ける場合、♂は腹部末端の「成虫の下付属器になるべき突起」・♀は腹部裏面の第8節の下から第9節に伸びる「原産卵管」の長さによる方法が紹介されています。

腹部背面(背中)に2本の淡色ラインが走るのがギンヤンマ幼虫
クロギン幼虫は背中のラインが途中で途切れて消失気味

2015年8月17日月曜日

もっと深くトンボ幼虫(ヤゴ)のことを知りたい人のために-その3 Anax属(ギンヤンマ属)幼虫の同定に向けて 『トンボ通信94号』 1

それでは、「下唇部側片」の外縁の形状以外でギンヤンマ属の幼虫の同定が出来ないのか?と問われるならば、「決してそうではない」とお答え出来ます。実際はもっと簡単に見分けられるのです。『トンボ通信94号』ではそれを紹介しています。尚、記事の文中「谷幸三氏の作図を・・」となっていますが、正しくは私・小関裕兄 自身の作画です。お詫びと訂正いたします。





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もっと深くトンボ幼虫のことを知りたい人のために―『トンボ通信49』その2

その続きです。


もっと深くトンボ幼虫(ヤゴ)のことを知りたい人のために そのⅠ― 『トンボ通信』49号より

今回から、より専門的にヤゴを見ていこうと思います。とりわけAnax属(ギンヤンマ属)の幼虫の同定(見分け)のポイントに絞って進めていくシリーズです。前回、ご紹介した、「房総蜻蛉研究所」発行の『トンボ通信』49号・94号・97号を取り上げます。 

2015年8月14日金曜日

互井賢二氏論文『プールのヤゴ救出作戦の位置付け』-その二


『プールのヤゴ救出作戦の位置付け』―互井賢二氏の論文より抜粋

近年、各学校、等で夏のプール開き前のプール清掃の際にプール内に生息しているトンボ幼虫(ヤゴ)の救出活動が盛んになって来ました。その背景には「自然回帰ブーム」があると考えられます。そこで今回はその活動をさらに一歩前進させる「(夏を除く)プールの トンボ池化 計画」のための方法論とも言うべき論考を御紹介いたします。本論考は千葉県在住で千葉県自然観察指導員であり、日本トンボ学会会員でもあり、さらに「房総蜻蛉研究所」を主宰し、会誌『トンボ通信』でトンボ・ヤゴに関する理科・文科両面に亘って意欲的な投稿を続けていられる互井賢二( たがい けんじ )氏の手によるものです。本論考のブログ掲載を快く諒解して下さった互井氏に深く感謝申し上げる次第です。

尚、この論文は、現在、静岡県賀茂郡松崎町の「ギャラリー侘助」にて開催中の
「ヤゴから見えるトンボの不思議」会場に展示してあります。
#「ヤゴから見えるトンボの不思議」@松崎町「ギャラリー侘助」




2015年8月8日土曜日

夏休み特別授業8-「ヤゴの脱皮」

ヤゴが急にエサを食べなくなったら、脱皮が近付いているのかもしれません。

そのときのヤゴの体に変化が見られます。何となく体が伸びた(突っ張った)ような感じがあります。

脱皮が近付いたヤゴ(クロスジギンヤンマ)
普段の様子(クロスジギンヤンマ)-見較べてみましょう。


それでは、ヤゴの脱皮(終齢脱皮)の様子です。

脱皮前のクロギン亜終齢幼虫

透明な青緑色をしています。

脚の間から垂れ下っているのが「下唇」


「下唇」が畳みこまれています。        

脱皮殻



クロスジギンヤンマの終齢幼虫

以上、クロスジギンヤンマ幼虫の亜終齢(終齢のひとつ手前)から終齢へ脱皮する様子を見てきました。亜終齢と終齢では「翅」の長さがずいぶん違いますね。

2015年8月7日金曜日

夏休み特別授業7-「ヤゴを飼ってみよう。」

家でヤゴを飼育して、その生態を観察してみましょう。

ヤゴを飼育する容器
  • イトトンボ類は小型の、トンボ科は中型のタッパーで十分飼育できます。容器に水を5㎝程度の深さに入れ、ヤゴとともに採集した落ち葉や枯れ草を入れます。(イトトンボ類は水草も入れます) トンボ科でもシオカラトンボなど、泥にもぐる種類は、容器の底に泥を浅めに入れます。
  • ヤンマ科の場合は、タッパー(中~やや大きめ)でも飼育出来ますが、広口の「びん」でも飼育出来ます。-終齢になり羽化が近付いたときに羽化用の枝を入れる必要があります。その場合は「びん」のほうが設置しやすいです。落ち葉や水草を入れます。-容器に1頭づつがベストです。

容器を置くところは直射日光が当たる場所は避けましょう。-水温が上がりすぎるのを避けるため。静かな場所に置くようにします。容器の中は採集した環境に近付けるように心がけましょう。

ヤゴの餌

ヤゴはトンボと同じく肉食性昆虫です。自分より小さいものなら他のヤゴを含む水生昆虫(野外では水に落ちた昆虫も食べることがあります)・小魚・小さいオタマジャクシなど何でも食べます。中でもどの種類でも最適なのが「あかむし」です。私の場合はキューブ状になった「冷凍あかむし」を水で戻して与えています。ただし、ヤゴは生きた動物を食べるので、底に落ちて動かない状態のあかむしは食べようとしません。(例外として、水草に引っかかったあかむしがヤゴが動くために揺れたようになるのをヤゴが食べているのをよく見かけます)     一番確実な方法は、ちょっと面倒臭いのですが、広くて浅目の容器にヤゴを移して(水はヤゴの「高さ」程度)、あかむしを一匹つづピンセットでつまんでヤゴの眼の前に持って行き揺らしてみせる方法です。すると大抵のヤゴはすぐに喰いつきます。一日の餌の量は
  • ヤンマ科 10匹程度  トンボ科 5匹程度 イトトンボ類 1~2匹 が目安です。

ヤゴは餌の捕え方が非常に面白く、それもまた自由研究になりますので是非観察してみましょう。

「下唇-かしん」を伸ばして捕食する様子


普段は畳まれている「下唇」

ヤゴは頭の下にある「下唇(かしん)」と呼ばれる部分を伸ばして獲物をキャッチし、口元へ持って行って食べます。

2015年8月6日木曜日

夏休み特別授業6  「ヤゴをみつけたら」

ヤゴ探しに必要な道具

バケツ(採集したヤゴを入れる) ・ 魚や水生昆虫用の網 ・ 中型~小型の容器(タッパーなど)を数個-ヤゴの大きさや種類で分けるため

観察記録を作る

  •  採集日時 天気 水辺の環境-(例) 「明るい池」や「木陰の多い池」など、池の感じ
  •  どのような種類のヤゴが何頭いたのか?
  •  ヤゴは水辺のどのような場所-(例) 「水草の多い場所」・「落ち葉のつもった場所」・「泥をすくったら、その中にいた」 など
  •  同じ種類のヤゴの大きさ-「同じ位の大きさのヤゴばかり」か?「大小バラバラ」か?

採集したヤゴを持ちかえる場合

  •  ヤゴは1種類につき1頭~2頭程度にしましょう。
  •  あまり小さいものは持ち帰らないようにしましょう。持ち帰るヤゴの大きさは( ヤンマ科では3㎝以上 ・ トンボ科では2㎝以上 ・ イトトンボ類では1.5㎝以上)

ヤゴの持ち帰り方

 ヤゴは水生昆虫で「えら」で水中の酸素を取り入れて呼吸しています。でも魚とは違い水をたっぷり入れなくても大丈夫です。例えば容器に池にある水草や濡れた落ち葉や枯れ草を入れ、ヤゴを入れて、その上にまた枯れ草や落ち葉・水草などをかぶせて、ヤゴの体が乾かないようにして持ち帰りましょう。ティッシュペーパーなどで代用するのもよいです。あと、ヤゴとは別に、採集場所の水をペットボトルなどに入れて持ち帰るのも良い方法です。何故かというと、お家での水道水は塩素・カルキなどが含まれている場合があり、そのままでは「ヤゴの水」として使用することができません。水道水は一日ほど、バケツに汲み置きする必要があります。また汲み置きした水でも、水道水は「無生物の水」で、採集場所の水とは基本的に違ういます。そのため、採集場所の水が役にたつのです。飼育するときは、混ぜてつかうのもよいでしょう。また、落ち葉や枯れ草なども捨てずに使うことをお勧めします。水の「栄養度」を上げることの他にヤゴの「隠れ家」にもなります。

2015年8月2日日曜日

夏休み特別授業 5-「ヤゴの住む環境・・トンボが飛んでくる池」-♯河津町・下田市・南伊豆町

「どんな池にどんなヤゴがいるのか?」 その目安(めやす)として、トンボ(成虫)の飛来(ひらい・・飛んでくること)も重要です。

ヤゴが居そうな池に行ったら、まず「トンボが飛んでいるかどうか?」を確かめてみてください。

もし、その池のまわりをトンボがしきりに行ったり来たりしていたら、その池はそのトンボの「繁殖場所(はんしょくばしょ)」と考えてよいと思います。特にオオシオカラトンボやクロスジギンヤンマなど、「小さい池」を好む種類は確実性が増します。

池にトンボが飛んでくる場合

1 先ず♂が池のまわりをしきりに飛び回る・・これは「パトロール飛行」と呼び、♀を探すための行動です。

ギンヤンマ(♂)とパトロール飛行(下)




クロスジギンヤンマ(♂)とパトロール飛行



上の写真で、ギンヤンマの飛んでいる水辺は「周りが開けた明るい感じの水辺」、クロギンは逆に「やや薄暗い感じの小さな水辺」であることがわかりますね。「成虫(トンボ)がやってくる池(水辺)」が「ヤゴが住んでいる池」と言えそうですね。


こちらの2種類でも調べてみよう。


シオカラトンボ(♂)

オオシオカラトンボ(♂)


その他のトンボについても、「どのような環境の水辺にどんな種類が来るか?」 を図鑑などを参考に調べてみるのも面白いと思います(ただし、トンボは♂♀で体の色や模様が違うことがほとんどなので注意が必要です。) ヤゴを探すポイントとしても役に立つでしょう。


オオシオカラトンボの交尾


クロスジギンヤンマの産卵

2015年8月1日土曜日

「夏休み特別授業」4 ー 成長段階によるヤゴの形の違い・後半

ヤゴを採集して、家に持ち帰って観察するのはどの成長段階のヤゴがいいの?

ヤゴのどういう特徴を観察したいのか?にもよりますが、やはり最大の見どころは「トンボへの羽化(うか)」シーンの観察だと思います。その場合は終齢幼虫が一番適していると思います。

でも、終齢幼虫を採集・持ち帰る場合、是非とも守っていただきたいことがあります。

終齢幼虫でも「最初の頃」と「本当に羽化が直前に迫った時期」では、ヤゴの体に変化が現れます。

クロスジギンヤンマ終齢幼虫ー前期(左)と後期(右)


この絵はクロスジギンヤンマですが、「授業」3でも触れたとおり、クロギン(クロスジギンヤンマのこと)は秋~冬にならないと終齢になりません。でもギンヤンマをはじめ、今がこの時期のものも多いので、眼にする機会は多いと思います。クロギンに限らずどの種類のヤゴでもそうですが、右側のヤゴと左側のヤゴとでは、何所が違うか、見つけることが出来ましたか?

はっきりと違うところは2つありますね。そう、「翅(翅芽)」と「目(複眼ーふくがん・・昆虫の目は小さな目がたくさん集まって出来ているので、こう呼びます)。右側のヤゴ・・こちらが羽化直前のものですが・・翅は開いて(前に出ているほうが後ろ翅・中にあるのが前翅になります。)、前翅が先端(せんたん)まで見えるようになります。複眼も左右が真ん中で繋がってトンボらしい感じになるのが判ると思います。こんな特徴が現れると、水面から高く突き抜けている植物などの茎につかまっていることが多くなります。羽化の準備を始めているのです。ですから、こんなヤゴを見かけたら採集せずにそのままにしてあげて下さいね。