2015年7月31日金曜日

夏休み特別授業3「成長段階(せいちょうだんかい)によるヤゴの形の違い」

同じ種類のヤゴでも成長の段階で見た目がずいぶん違うことがあります。

卵から孵化(ふか)して時間が経っていないヤゴと成虫(トンボ)になる手前「終齢幼虫(しゅうれいようちゅう)」では大きさはもちろん、形もちょっと違って見えることもあります。これまでの「授業」に登場したヤゴの絵はすべて終齢幼虫をモデルにしています。でも、クロスジギンヤンマなどの春(5月)から初夏(6月)に羽化(うか・・・トンボになる脱皮のこと)種類は夏休みの期間はまだ終齢幼虫にまで育っていません。では、どんな感じかというと・・・

クロスジギンヤンマのヤゴ


こんな感じです。大きさは2㎝位。終齢幼虫は4.5㎝以上ありますから、ずいぶん小さいですね。あと4回ほど脱皮して、秋~冬(10~12月)に終齢になって、そのまま冬を越します。


ではギンヤンマは?というと、成虫(トンボ)へ羽化する期間がなんと4月~10月と長く、その期間中、産卵・孵化しているので、ヤゴの成長もバラバラです。大きな終齢幼虫も多いのですが、小さいヤゴもときどき見かけます。

ギンヤンマのヤゴ


みなさん、「授業1」で御紹介した「終齢幼虫の図」と何所が違うか?わかりますか。     先ずちがうのは「翅(はね・・・ヤゴの背中を見ると・・ありますよね)」の大きさ」です。 トンボ もそうですが、蝶などと違って「さなぎ」の時期が無い昆虫(「不完全変態(ふかんぜんへんたい)する)昆虫」の幼虫は、外側から翅(正式には「翅芽(しが)といいます)が見えるのが特徴です。脱皮する毎に翅(翅芽)が大きくなっていきます。同ブログ「トンボには蛹(さなぎ)の時期はありません」にも詳しく書いてあるので、そちらもご覧下さい。

ヤゴでは終齢幼虫の翅(翅芽)の長さは 全体の1/3-1/4程度です。  

夏休み特別授業2ー「ヤゴの住む環境」

ヤゴは種類によって、住む環境(かんきょう)が違います。


「ビオトープ」や「トンボ池」と言っても「まわりがどんな環境の池なのか?」によって住んでいるトンボの幼虫の種類も様々です。それを調べてみるのも面白いと思います。

これから中心にお話する ギンヤンマ と クロスジギンヤンマ の幼虫(ヤゴ)も住んでいる池の様子が違います。



1 ギンヤンマのヤゴがよく見られる池は「まわりが見通しよく、明るい感じで水面が見えている池」です。このような池にはギンヤンマのヤゴの他にアオモンイトトンボやシオカラトンボのヤゴがよく見られます。

2  クロスジギンヤンマのヤゴがよく見られる池は「まわりに木陰が多く、やや薄暗い感じの小さな池」です。水深(すいしん)も浅いので水草が池の中心まで生えていて水面があまり見えないこともあります。このような池にはクロスジギンヤンマのヤゴの他にオオシオカラトンボやヤブヤンマのヤゴがよく見られます。

ヤブヤンマのヤゴ  体長4.4-5.0㎝

(説明) ヤブヤンマ幼虫は薄暗く、水草が少ないかわりに底に落ち葉がたくさん積もっている池で見られます。


1、2 の両方で見られるヤゴはアカネ類やコシアキトンボ・ウスバキトンボです。また水草の生えている池ならばクロイトトンボの仲間やショウジョウトンボのヤゴもみられます。



3 とくちょうのある池の場合   しょうぶ など、岸辺近くの水面からずっと突き抜けて生えている草の多い場所では マルタンヤンマのヤゴが見つかることがあります。


マルタンヤンマ幼虫  体長3.8-4.3㎝


木陰の多い池で、さらに木の枝が水面の上まで伸びている場所では オオアオイトトンボの幼虫も見ることがあります。(ただし、6月~7月初めまでで、残念ながら夏休み期間、というわけにはいきません)


オオアオイトトンボ幼虫 体長2.8-3.0㎝


プールに生息しているヤゴは、1 の「見通しの良い明るい池」を好む種類と共通しています。

2015年7月27日月曜日

夏休み特別授業1 「身近かなヤゴを探しに行こう」

夏休み自由研究のための特別授業

 -身近なヤゴを探してみようー

  ギンヤンマとクロスジギンヤンマ


夏休みの自由研究としてヤゴを探してみませんか?

ヤゴの中には身近かな場所ー学校のビオトープや公園やお寺・神社の池などーにも住んでいます。

その中でもとくに見つけやすく・飼育しやすく・かっこいいヤゴが

ギンヤンマとクロスジギンヤンマのヤゴです。


 

    ギンヤンマ・ヤゴ           クロスジギンヤンマ・ヤゴ
  体長 4・5-5.5㎝                  体長 4.5-5.0㎝

ギンヤンマ・クロスジギンヤンマ 両方とも トンボの仲間(トンボ目)のなかでも「ヤンマ科」というグループに含まれます。
トンボ(成虫)とは異なり、ヤゴ(幼虫)はそれぞれのグループによって姿形がはっきり違います。ヤンマ科のヤゴはその他と較べると、


「大型(3センチ前後~5センチ前後で体が長く、目(複眼)が大きい」

という特徴があります。



いっしょに見つかる他のグループ(科)のヤゴと較べてみよう。


アカネ属の幼虫  体長 1.6-2.2㎝

シオカラトンボ幼虫  体長 2.1-2.4㎝
ショウジョウトンボ幼虫  体長 1.7-2.4㎝

オオシオカラトンボ幼虫  体長 2.2-2.4㎝

ウスバキトンボ幼虫  体長2.4-2.7㎝

コシアキトンボ幼虫  体長 2.0-2.2㎝



ちがいがわかったかな?







上から順に トンボ科 アカネ属(アカトンボ)・シオカラトンボ・ショウジョウトンボ・オオシオカラトンボ・ウスバキトンボ・コシアキトンボの幼虫(ヤゴ)です。

この中で、アカネ属は夏休みの時期は成虫(トンボ)になっているので、ヤゴはみつかりません。


その他にもビオトープや人工的に造られた池に多いグループとして、


イトトンボの仲間 があります。

 

                                                
 左 クロイトトンボの仲間         右 アオモンイトトンボ(アジアイトトンボの仲間)


この仲間のヤゴは腹端(ふくたん―お尻の先のこと)に3枚の「えら」がついているのがとくちょうです。ヤンマ科やトンボ科などのヤゴの「えら」はお腹の中にあるので、外側からは見えません。イトトンボるい の「えら」は、ちょっとしたことですぐ取れてしまいますが、だからといって死んでしまうわけではありません。「えら」の「つけ根」はちゃんと残っていて、そこで呼吸をしているからです。






2015年7月23日木曜日

ダイジェスト版「かえると水辺の昆虫たち」 最終回「かえるを食べる水生昆虫-タガメ」

タガメは水生昆虫のうちでも、とりわけ大きく、大型のヤゴは勿論のこと、自分より体の大きいカエル(成体の)でも襲います。大きく強大な前脚でガッチリ捕えて尖った口器を差し込み、そこから消化液を獲物の体内に注入して、体組織を溶かして摂取する「体外消化」型の昆虫です。

♯『浅草かえるアート展』




2015年7月17日金曜日

ダイジェスト版「かえると水辺の昆虫たち」 第二部 「かえるを食べる水生昆虫-体外消化」

前回では カエル(おたまじゃくし)をたべる水生昆虫 として、ヤゴ(トンボ幼虫)を取り上げました。
ヤゴは顎でそのまま食べて体の中で消化する「体内消化」-いわゆる「ふつうの消化パターン」です。
今回取り上げるのは、それとは異なる「体の外・・つまり捕えた獲物の体内に消火液を注入してドロドロに溶かして摂取する「体外消化」という消化パターンをもつ水生昆虫です。

このタイプの水生昆虫として、先ず最初にゲンゴロウの幼虫を見てみます。 ゲンゴロウは御存知の方も多い、池や沼などの止水域に生息する甲虫の仲間です。ゲンゴロウ(成虫)は鰓で呼吸するヤゴとは異なり 、空気を体の隙間に溜めて、そこから酸素をとりこんで呼吸しています。 幼虫はご覧のような成虫とは全く異なる形をしています。ゲンゴロウはトンボとは異なり、蛹の時期のある 「完全変態の昆虫です。なので、脱皮(3回)をしても体の表面に翅が見えることはありません。でも、鰓を持っているわけでもなく、呼吸はお腹の先にある長い管を水面に出して、そこから酸素を取り入れて呼吸します。頭部を見ると先ず目に着くのは大きな顎です。実はこの顎を獲物の体に喰い込ませて、その顎の先から出る消火液を獲物の体に注入して、体組織を溶かして食べるのです。

♯『浅草かえるアート展』

2015年7月16日木曜日

ダイジェスト版『かえると水辺の昆虫たち』・第二部「かえるを食べる水生昆虫」

さて、それでは今回から、第2部 として

「かえるを食べる水生昆虫」 に突入します。

1. カエルの幼生である「おたまじゃくし」を食べる昆虫 

2. 幼体・成体である「かえる」を食べる昆虫

に分けることにします。


先ずは、「おたまじゃくし」を食べる昆虫はかなりの種類があり、このブログの主人公たる「ヤゴ」もその仲間にはいります。ただし、ヤゴの中でも大型のオニヤンマ科やヤンマ科のヤゴです。

ヤゴの捕食については、このブログでも述べていますが(5月の個展「ヤゴから見えるトンボの不思議」)にて掲載-この図で思い出していただければ幸いです。

                                         

(上図) ギンヤンマ終齢幼虫 全形図(中・下図) 捕食の様子



♯『浅草かえるアート展』



                                           

2015年7月14日火曜日

ダイジェスト版『かえると水辺の昆虫たち』 vol.2

前回、お話した

「おたまじゃくし」は人間でいう「胎児」の状態である。

意外とイメージし易かったのではないでしょうか?

この「イメージのし易さ」は何所からくるのでしょうか?

それは「人間」も「かえる」も「脊椎動物」である。という点にあると思われます。

脊椎動物(せきついどうぶつ) 頭部に「脳」があり、背骨でそれを支える体の構造をもった動物

それでは「無脊椎動物の変態」の場合はどうでしょうか?

これは、なかなか簡単にはいかない、ということになります。

例えば昆虫の場合、卵から孵化した幼虫は成長するにつれて体が大きくなりますが、羽化した成虫はもう体が大きくなることはありません。(理由は体の外側に堅い殻で覆われているため)

一方、か人間は勿論、子供から大人へと身体も成長し続けますし、かえるにしても、例えば変態後のヒキガエルは1.5センチ程度で、それが15センチ位になる「大人の」ヒキガエルになるのに5年程かけて「成長」するわけです。

その点でも両者には大きな違いがある。と言えるでしょう。

「昆虫の変態」については、このブログの5/28「トンボには蛹の時期はありません」で詳しく紹介したので、そちらをご覧ください。

♯『浅草かえるアート展』

2015年7月13日月曜日

ダイジェスト版『かえると水辺の昆虫たち』

みなさん、こんにちは。

今回から『カエルと水辺の昆虫たち』と題して、水生昆虫の不思議な生態を中心に御紹介していきたいと思います。

「え?どうして かえる?」と思われる方も多いかと・・・実は訳がありまして・・この題名は、毎年6月、墨田公園内の「リバーサイドギャラリー」(浅草駅からすぐ傍)で行われている『浅草かえるアート展』の演目として行われた講演を基にしたものです。

なので、始まりは「かえる」です(^^)  ♯『浅草かえるアート展』



















この2枚の写真のかえる(左上・アズマヒキガエル 右下・ヤマアカガエル)、いずれもオタマジャクシから変態したばかりです。さてここでクエスチョン。

人間で言うと、どの頃?

1、赤ちゃん 2、成人式

正解は1の「赤ちゃん」です。


おたまじゃくしは人間で言うと「胎児」の状態なんです。百科事典などで「胎児」の項目を見ると、最初、「尻尾」があるのに気が付きます。それから次第に手足が生えて尻尾が無くなり、「誕生」となるわけですね。

おたまじゃくし→かえる への変態は人間で言う「このプロセス」なのです。

2015年7月9日木曜日

即興画を使いながらの説明

有難い事に、詳しい説明を求められる事も多く、即興で図を描きながら説明を行う事も・・







上段図・右上 交尾の様子   同・左上下 連結産卵 (上・連結打空産卵 アカネ類に多い。 下

・連結植物組織内産卵 オオギンヤンマ・ギンヤンマに見られる。)

中段図・トンボ目は前後翅の形状から二つの「亜目」に分けられる。

(1)、前後の翅の形が同じ 「均翅亜目」-カワトンボ・イトトンボなど。

(2)、前後の翅の形が異なる 「不均翅亜目」- 通常イメージする「トンボ」は大抵こちら

下段図・昆虫と蜘蛛などの昆虫以外の「虫」との違い。

「昆虫は体が大きく3つ(頭部・胸部・腹部)に分かれる」

トンボ(不均翅亜目)も複眼の形でグループ分けが出来る。

2015年7月8日水曜日

『ヤゴから見えるトンボの不思議』 の 番外編 1

今回は、ヤゴ・トンボ関連以外にも、過去2回、伊豆シャボテン公園での個展に出展した、公園内の動物や鳥を描いた作品をポストカードにしたものを紹介・販売しました。



        





この中にあるハシビロコウの原画は、現在でも「バードハパラダイス」内の展示室に飾られています。                                                            

2015年7月5日日曜日

御来場いただいた方々・フェイスブック等で支援していただいた皆様、有難うございました。

5/16から約一カ月半に亘って伊豆シャボテン公園にて行われた拙個展『ヤゴから見えるトンボの不思議』も本日をもちまして終了いたしました。御来館いただいた皆様、またフェイスブックなどで御支援いただいた皆様、

有難うございました。

展示は終りましたが、当ブログでは今後も「特に多かった質問」にお答えしたり、楽しいエピソードなども紹介いたします。

当ブログも引き続き御愛顧の程、宜しくお願いいたします。



昨日より、私の心強いサポート・アシスタントを買って出てくれた「フレイク」こと、おおさわひろかず氏による 「トンボ・ヤゴ 、カエル、モルモット ブーメラン工作・プレイング体験」と「剣玉で遊ぼう!」体験が行われました。

私もそちらのお手伝い。

2015年7月4日土曜日

地方新聞に掲載されました。

細密画「ヤゴの世界」展 産卵〜成虫を描写−伊東- 伊豆新聞

http://izu-np.co.jp/ito/news/20150531iz0000000113000c.html

伊豆シャボテン公園 小関裕兄・細密画展「ヤゴから見えるトンボの不思議」[伊東市富戸] | 静岡新聞SBS - @S[アットエス]

http://www.at-s.com/event/detail/1174197703.html

水族館のビオトープ。

この個展のアシスタントを務めてもらっている僕の友人が、下田市海中水族館でビオトープを発見しました。

そのビオトープはアクアスタジアムの観覧席の上から行ける屋上にあります。

 



飼育員さんの御好意で、脱皮殻を含む羽化殻を採集させていただき、同定した結果、シオカラトンボ 2、(写真・左) ショウジョウトンボ 1 と判りました。

2015年7月3日金曜日

7/4・5 本個展、最終イベント - トンボブーメランイベントもあります。

さて、長きに亘った拙画展 『ヤゴから見えるトンボの不思議』も今回が最終週となりました。
そのイベントとして、4・5(土、日)は、フレイクおおさわ氏による「トンボブーメランイベント」を会場にて開催いたします。皆さま、是非ご参加下さい。