2015年5月28日木曜日

トンボには蛹の時期はありません。



この図をご覧になった方のなかに「蛹から羽化したんですね」という人が少なからずいらっしゃったので、トンボの変態について説明をしておく必要を感じました。

トンボには蛹の時期はありません。トンボは幼虫(終齢幼虫)からそのまま羽化して成虫になります。

このスタイルは 「不完全変態」 と呼ばれ、トンボ以外にも、カゲロウ・カワゲラ・ゴキブリ・シロアリ・
ナナフシ・ハサミムシ・カマキリ・バッタ・コオロギ・キリギリス・カメムシ・セミ・ウンカ・ヨコバイ・・などが含まれます。

「不完全」と言うからには「完全変態」もあるはずで、こちらはいわゆる「蛹の時期を経る」変態のスタイルです。

チョウやガ・甲虫・蚊や蠅・アリやハチ・ウスバカゲロウなどの仲間・・などがこれに含まれます。

では、一体、何をもって、「完全ー不完全」 と言うのか?というと、幼虫期は成虫期と体の構造が全く異なるため、蛹の時期に一旦、体の組織を全て解体し、成虫の体の組織へと「作り変え」を行う(そのため、蛹は動かないものが多い)のです。

体組織の「作り変え」を全面的に行うのが 「完全変態」 、部分的に行うのが 「不完全変態」 、となるわけです。


さて、以上のように昆虫の変態には、このような区別-実はもうひとつ、体が大きくなるだけで、構造上の変化が見られない 「無変態」 と呼ばれるタイプーがあるのですが、幼虫の外見にも変態の違いによって、基本的な違いがあります。





上の絵はトンボ(クロスジギンヤンマ)の初期の幼虫と亜終齢(羽化になる2脱皮前)幼虫を描いたものですが、「背中」にご注目下さい。初期の段階で小さな「翅」が見えるのがお分かりになるかと思います。この小さな「翅」は脱皮して成長する毎に大きくなってゆきます。

この「翅」がはっきり見えるのが「不完全変態」の幼虫の特徴のひとつです。

さらにもうひとつは、「複眼を形成している」という点です。

昆虫の眼は、小さな「個眼」が多数集まって「複眼」を形成しているのですが、蝶などの幼虫は「単眼」と呼ばれるひとつひとつが独立した「眼」が円状、または環状に並んだ「集眼」という状態になっています。

この状態では、「光を感知する」程度、と言われています。

上記のような「違い」は進化によるものなのです。

「不完全変態」する昆虫の方が古いタイプの昆虫で、「完全変態」する方の昆虫が「進化したタイプ」と言えます。

「何故そう言えるのか?」というと、「完全変態する昆虫」、特にアリやハチを思い浮かべてみて下さい。彼ら・・イエ、「彼女ら」ですね、どちらかと言うとーは複雑な社会構造を持ち、幼虫は成虫に「養育」される、という特徴を持ちます。すなわち「幼虫」は「自分で歩きまわって餌を摂る必要が無い環境にある」といえるでしょう?

従って、アリやハチの幼虫は「翅」や「複眼」どころか「肢」や「眼」そのものさえ無くなって、ただ「食べて成長するだけ」の機能になっているのです。

これは昆虫の進化の究極の形態、といえるでしょうね。

ヤゴは、というと、姿かたちこそ成虫とは異なりますが、体の基本的な構造は同じです。

自力で餌を探して捕食する、など成虫と共通した(「水中」と「空中」の差こそありますが)活動スタイルのため、といえます。


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