2017年2月27日月曜日

ヤゴを育ててみよう。(1)

ヤゴを採集したら、トンボになる(これを「羽化(うか)」と言います)までそだててみましょう。

5月~6月頃に採集したトンボになる直前の幼虫「終齢幼虫(しゅうれい ようちゅう)ならば、木の枝(割りばしでも可)をさした容器にいれておけば、そのまま羽化がみられることもあります。

水槽などが理想的ですが、無い場合でも簡単に容器が作れます。

↑の写真はペットボトルで作った容器です。(撮影のため、明るい場所に出してありますが、本来はあまり日の当たらない場所にしましょう。暑さはヤゴの大敵です。水は水道水でも大丈夫の地域もありますが、塩素・等が含まれている場合もあるので、一日、汲み置きした水のほうが安全です。

~~~ ヤゴをもっと専門的に知りたい方のために ~~~

ヤゴを調べるときに、非常に参考になるおススメ本を紹介します。それがこちら「身近なヤゴの見分け方」(世界文化社)です。

横浜市とその周辺の平地の水辺に生息するトンボ幼虫72種を網羅し、その前身写真と似ている種の見分け方を写真で紹介した本です。

著者の梅田孝さんは、トンボ学会員の方です。写真担当の渡利さんから直接購入しました。ちなみに、梅田さん・渡利さん、ともに横浜生まれです。

ヤゴをメインにしたトンボ図鑑は非常に珍しく、画期的ともいえる本です。採集したヤゴの同定には非常に役に立つと思います。

また、この本の終わりの方には、このblogでも紹介したヤゴの採集の仕方と採集したヤゴの飼い方も載っています。


この本の中に、僕もこのblogで再三取り上げたギンヤンマ属2種(ギンヤンマ・クロスジギンヤンマ)とその種間雑種のスジボソギンヤンマの幼虫(終齢幼虫)の複眼部での見分け方が載っているので、少しそちらを詳しく見ていくことにしましょう。

↓ギンヤンマ属のヤゴは終齢になると複眼部の内側にトンボになったときになる複眼の一部が現れます。この部分は終齢幼虫の段階では複眼の機能を持たず「高分解能域」と呼ばれる(実は僕もその本でそういう呼び名であることを知りました)淡色部分となります。その部分の形状がギンヤンマとクロスジギンヤンマでははっきりと異なるため、同定に非常に役立つのです。

通常、ギンヤンマとクロスジギンヤンマの区別は頭の裏側に畳み込まれた「下唇部(かしんぶ)」の先端の内側の鉤状の部分「側片(そくへん)」を調べることでなされるのですが、実はそれは簡単ではなく、意外に誤同定が起きやすい部分なのです。しかも、生きたヤゴで調べようとすると、ヤゴを裏返しにしなければならず、ヤゴが嫌がって暴れたり、お尻の先の尖った尾部付属器で刺されて、痛い思いをしたりすることもあります。複眼の形状ならば、ヤゴを上から見るだけなので、とても楽ですね。

ただ、この「複眼内縁の淡色部分」は亜終齢からやっと現れはじめ、終齢ではっきりするので、それ以前のヤゴでは難しい、という「弱点」があります。でも、ご心配なく。「高分解能域」-つまり内縁の淡色部分のみならず、「複眼そのものの形状」もギンヤンマのヤゴとクロスジギンヤンマのヤゴでは、かなりはっきりした違いがあります。↓の写真を見ればすぐに分かると思います。

ギンヤンマのヤゴの複眼は前後に細長く、先の尖った形をしているのに対し、クロスジギンヤンマのヤゴの複眼はもっと斜め方向に大きく膨らんだ形をしているのが見て取れると思います。(鉛筆で書き加えた→部分)

この2種の種間雑種であるスジボソギンヤンマのヤゴはちょうど中間的な形状です。


                    

#「ギンヤンマ属2種幼虫の外部形態による同定について」 

#「ギンヤンマ属2種幼虫の複眼部形状による同定について」


↓の写真はギンヤンマ幼虫(左列)とクロスジギンヤンマ幼虫(右列)の各部分の違いを比較したものです。

                  

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